【圧巻】洪水から首都圏を守る!神奈川の地下に眠る巨大トンネルと巨大プールを観に行った!

【圧巻】洪水から首都圏を守る!神奈川の地下に眠る巨大トンネルと巨大プールを観に行った!

こんにちは。ライターの田村美葉と申します。日本各地にある土木構造物をいろいろ眺めに行く<インフラツーリズム>を個人的にたのしんで10年ほどになります。土木構造物には緻密な測量が不可欠。「たのしい土木旅行」と題して、測量技術者も素人(私です)も気になる、明日観に行けるかっこいい土木を紹介いたします。

第1回は、いざという時に首都圏を洪水から守ってくれる「地下に眠る巨大トンネル&巨大プール」、神奈川の「恩廻(おんまわし)公園調節池」と「川和(かわな)遊水地」です。

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こちらが川崎市、町田市、横浜市の境界にある「恩廻公園調節池」。歩いている人たちと比較して、その大きさがわかるでしょうか。内径は15mほどもある巨大なトンネルです。深さ約25メートルの位置、横に約600メートルに渡って続き、11万㎥もの水を貯めます。

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こちらは、横浜市営地下鉄グリーンラインの車両基地の下に整備されている「川和遊水地」。12万㎥の水を貯めることが可能です。

人口集中都市に必要不可欠な「調節池・遊水地」

今年2019年は、大きな台風が関東近郊を何度も直撃しました。首都圏でも多摩川、相模川など大きな川の氾濫が警戒され、緊張した1日を過ごした方も多いのではないでしょうか。「ダム」や「堤防」の設備や役割についても注目されましたが、もうひとつ、首都圏の治水システムの中で重要な役割を持っているのが、「調節池」「遊水地」と呼ばれる施設です。

冒頭紹介した「恩廻公園調節池」「川和遊水地」が整備されている鶴見川流域は、高度経済成長期に急速に市街化が進んだ地域。緑地や田畑など雨水を浸透させたり一時的に保水する機能を持っていた土地に、住宅が建ち並びアスファルトの道路が張り巡らされることでその機能が減少。大雨によって一気に川が溢れる危険性が高まりました。

そのため、川の水位が高くなった時に一時的に水を貯め、雨が止んで洪水の危険が去ってからゆっくりと流すための施設が、首都圏にはいくつもあるのです。

私がこの2つの施設を訪れたのは、2019年3月に開催された神奈川県主催の「バスでめぐる、かながわの河川施設」というバスツアーを介してですが、平日であれば、個人であってもどちらの施設も見学を申し込むことができます。他に、関東近郊では埼玉にある「首都圏外郭放水路」も有名です。

では、それぞれの施設の見どころを詳しく紹介していきましょう。

「だだっ広い」だけじゃない、緻密な計算がされた川和遊水地

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川和遊水地は、横浜市営地下鉄グリーンラインの車両基地の地下にあります。確かに鶴見川のすぐ横のとても都合の良い場所にあるのですが、たまたまここで車両基地の計画が進められていて、これ幸いと地下を利用することになったのだそう。ラッキーです。

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車両基地の下、ギリギリいっぱいまで遊水地が作られているわけではなく、計算によって「いざという時に必要な大きさ」が決められ、それに合わせて設計されています。

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管理棟の横に作業車両などが入るためのスロープがあり、入り口には水が溢れないようにするゲートが設けられています。このゲートの高さは鶴見川の堤防の高さに合わせられています。鶴見川が氾濫しないようにするための施設ですから当たり前といえば当たり前なのですが、現地で見ると「なるほど」と感心してしまいます。

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このスロープをくだっていくと現れるのが

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巨大なプール。ふだんは水もなく、全く車のいない地下駐車場のような、シン、とした空間です。

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過去に記録した最大水位が壁に記されていました。見学時点での最高水位は平成26年10月の台風の時。先日の台風19号の時の水位もここに記されたでしょうか。

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その横にあるのが、溜まった水を川へ戻す排水樋管。こちらは、人がかがんでも通れない程度の大きさ(通る必要はないですが)。全体の大きさに比べるとかなり小さいです。お風呂の栓みたい。

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奥へと歩いていくと、ほとんど気づかないほどに勾配がつけられています。これは、鶴見川の勾配に合わせてあるとのこと。そうでないと、高さがだんだん川とずれてしまうことになります。これも、当たり前と言われれば当たり前なんだけど「ほほぅ」となるポイントです。

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奥まで歩いていくと、明るい場所がありました。

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こちらは越流堤。一定の水位を越えると自動的に水が流れ込むようになっています。立っている柱は大きなゴミなどを塞きとめるためのスクリーン。「人の目」を意識してデザインされているわけではないのですが、規則正しく立つ柱に「美しさ」を感じるのが、インフラ構造物の不思議で面白いところです。

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余談ですが、鶴見川流域を訪れるとしょっちゅう目にするのが「バク」の絵。流域がバクの形に似ている、ということですが、そもそも「バクの形」ってそんなに普通にイメージするものでしょうか。誰が言い出したんだろう。

水をバウンドさせて受け止める。恩廻公園調節池

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続いて、恩廻公園です。川のすぐ横にある一段低い公園、ふだんは「何もない公園だなー」って感じですが、川から水があふれた時には一旦ここで砂利を沈殿させるとい役目を持っています。

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公園の奥にあるここがスクリーン。余計なゴミを取り除き、水を地下へと取り込みます。

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その地下へと潜入したところです。上の穴から渦を巻きながら水が落ちてきて、まずはこの「立坑」で水の勢いを受け止め、バウンドさせて上の穴から隣の「本坑」へと流れ込みます。

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水が流れ込む滑り台のようになった本坑の入口。

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穴を掘るのが難しい地層を避けるため、入口は縦16.5mのAトンネル、奥に進むと縦11.4mのBトンネルと、形を変えた二つのトンネルが繋がっています。やたらとかっこいい。映画「翔んで、埼玉」などの撮影地としても使われているそうです(めちゃくちゃ神奈川の施設なのでちょっと意外)。

地下にある調節池、遊水地は、首都圏の治水システムの中で、シビアに設計・管理され、重要な役割を持つ施設ですが、その姿を実際に目にする機会がなく、まさに都会における「縁の下の力持ち」的な存在。ぜひ一度は訪れて、その「大きさ」を体感してみることをおすすめします。

「地表でのさまざまな活動」を支えるために存在する地下施設の、ふだんの生活のスケールとは異なる大きさを身をもって知ると、私たちが暮らす「都市」の大きさにもあわせて心を巡らせることになるでしょう。